「Celebrating Karachi: A Visual History」:失われた輝きと現代都市の対比を鮮やかに描き出す写真集

 「Celebrating Karachi: A Visual History」:失われた輝きと現代都市の対比を鮮やかに描き出す写真集

パキスタンのカラチという都市は、その活気あふれる街並みや歴史的な建築物で知られています。しかし、急速な都市化と開発によって、伝統的な建造物は姿を消し続けています。そんな中、「Celebrating Karachi: A Visual History」は、カラチの過去と現在を写真を通して描き出す、貴重な記録となっています。

本書は、パキスタン出身の写真家であり建築史家であるカマル・ウッディーン・アーシャーフィによって著されました。彼は、1980年代からカラチの街並みを撮影し続けており、本書はその集大成と言えるでしょう。アーシャーフィは、単なる建築物だけでなく、人々の生活や文化も捉えようと努めています。

「Celebrating Karachi」は大きく分けて3部に構成されています。

  • 第1部:歴史的建造物

この部は、カラチの創建から20世紀初頭までの建築様式を、写真と解説で紹介しています。ムガル建築の影響を受けたモスクや宮殿、イギリス統治時代のコロニアル建築など、多様な建築スタイルが紹介されます。特に注目すべきは、現在では姿を消してしまった建造物も多数収録されている点です。これらの写真は、過去のカラチの姿を垣間見せてくれる貴重な資料となっています。

建築様式 具体的な例 特徴
ムガル建築 タージ・マハル(アグラ) 美しい幾何学模様、白い大理石の使用
イギリス統治時代のコロニアル建築 カラチのハイコート ゴシック建築の影響を受けたデザイン、赤レンガの使用
  • 第2部:都市の変容

この部は、20世紀後半から現在までのカラチの都市開発を写真で追っています。高層ビルが立ち並ぶ近代的な街並み、活気あふれる市場、人々の生活風景などが紹介されています。アーシャーフィは、都市開発による変化と、それに伴う伝統的な建築物の消失を冷静に捉え、読者に考えさせます。

  • 第3部:未来への展望

この部は、カラチの未来について考察するエッセイが収録されています。アーシャーフィは、都市開発と歴史的建造物との調和の必要性を説き、持続可能な都市計画の重要性を訴えています。

本書の魅力の一つは、アーシャーフィの写真の美しさです。彼は、光と影を巧みに利用し、建築物の持つ独特な雰囲気を表現しています。また、写真の説明文も簡潔ながら詳細で、建築物や歴史に関する深い知識が伺えます。

「Celebrating Karachi」は、単なる写真集ではなく、カラチの歴史、文化、そして都市計画について深く考えるきっかけを与えてくれる一冊です。